実質的支配者についての申告書の書き方|定款認証で必ず出す書類
株式会社の定款認証で提出する、実質的支配者についての申告書の書き方です。誰を書くのか、何のために出すのかを整理します。
株式会社の定款認証の準備をしていて、実質的支配者についての申告書という書類があると知った人に向けた記事です。聞き慣れない言葉で、誰を書けばいいのか分からない。そんな段階の人が対象です。
株式会社の定款認証では、定款と印鑑証明書のほかに、実質的支配者についての申告書を出します。マネーロンダリング対策のために設けられた手続きで、会社設立をする人には避けて通れません。何を書くのかを整理しておきます。
何のための書類か

実質的支配者についての申告書は、株式会社の定款認証のときに公証役場に出す書類です。会社を実際に支配している人が誰かを申告します。
目的はマネーロンダリング対策です。会社が犯罪による収益の移転に使われることを防ぐという趣旨で、国際的な要請にもとづいて設けられた手続きです。
会社は登記簿に載る情報だけでは、誰が実際に持っているのかが分かりません。発起人の氏名は登記されないからです。
だから、定款認証の段階で公証人が確かめるという仕組みになっています。会社設立の入口でチェックするという考え方です。
暴力団員や国際テロリストに該当しないかも申告します。該当する場合、公証人は認証を拒否することができます。
この書類を出さないと、定款認証を受けられません。会社設立の登記にも進めないので、必ず用意することになります。
様式は公証役場からもらえます。日本公証人連合会のサイトにも掲載されていることがあります。
合同会社にはこの手続きがありません。定款認証そのものがないからです。会社設立の工程がまた一つ軽くなります。
ただし、金融機関で法人口座を開設するときには、同じ趣旨の申告を求められることがあります。制度としては広く共通しています。
書くこと自体は難しくありません。誰が実質的支配者に当たるかの判断さえ付けば、あとは記入するだけです。
会社設立の準備で用意する書類の中では、比較的軽いほうに入ります。
会社設立の登記のほうでは、この申告書は要りません。登記に添えるのは定款、払込証明書、就任承諾書、印鑑証明書などです。申告書は公証役場に出すだけで、登記には関係しません。
出典(一次情報)日本公証人連合会「9-4 定款認証」2026年9月15日確認
実質的支配者とは誰か

実質的支配者は、会社の議決権をどれだけ持っているかで判定します。段階的な基準が定められています。
まず、議決権の総数の4分の1を超える議決権を直接または間接に持っている自然人がいるかを見ます。
会社設立の場面では、発起人が引き受ける株式の数で判断します。一人で会社設立をするなら、その人が議決権の全部を持つので実質的支配者です。
二人で半分ずつ出資するなら、二人とも4分の1を超えるので、両方が実質的支配者になります。
4分の1を超える人がいない場合は、次の基準に移ります。会社の事業活動に支配的な影響力を持つ自然人がいるかどうかです。
それもいない場合は、会社を代表し、業務を執行する自然人が実質的支配者とされます。会社設立の場面では設立時代表取締役です。
法人が発起人になっている場合は、その法人を支配している自然人まで遡って書きます。最終的には個人にたどり着く形です。
つまり、実質的支配者は必ず自然人——個人です。会社や団体が実質的支配者になることはありません。
一人で会社設立をするなら、迷うところはありません。自分が発起人で、議決権の全部を持ち、代表取締役になるからです。
複数人で会社設立をする場合も、出資の割合が分かっていれば判定できます。定款の附則に書いてあるはずです。
判断に迷うなら、公証役場に聞いてください。定款の案を送るときに一緒に相談できます。
議決権の割合は、会社設立の登記で登記簿に載る情報ではありません。登記簿に出るのは資本金の額と役員の氏名だけです。だから外から見ても、誰がどれだけ持っているかは分かりません。
出典(一次情報)日本公証人連合会「9-4 定款認証」2026年9月15日確認
申告書に書くこと

申告書に書くのは、実質的支配者の情報と、該当する理由です。様式に従って埋めていきます。
まず会社の情報です。設立しようとしている会社の商号と本店の所在地を書きます。定款に書いたとおりに写します。
次に実質的支配者の情報です。氏名、住居、生年月日、国籍を書きます。
複数いる場合は、それぞれについて書きます。二人で半分ずつ出資するなら、二人分です。
該当する理由も書きます。議決権の4分の1を超えて持っているのか、事業活動に支配的な影響力を持っているのか、代表者だからか。
議決権の割合も書きます。一人で会社設立をするなら100パーセントです。
暴力団員や国際テロリストに該当しないことも申告します。チェックを入れる形になっていることが多くあります。
申告する人——発起人または代理人の氏名と住所も書きます。
本人確認書類の写しを添えるよう求められることもあります。運転免許証やマイナンバーカードなどです。
様式は公証役場によって細かい違いがあります。予約のときにもらうか、サイトから落としてください。
会社設立の準備で用意する書類の中では、記入そのものは短時間で済みます。
出典(解説)EXPACT「定款認証の手続きを個人で行う際に必要な準備とは?」2026年9月15日確認
一人で会社設立をする場合

一人で株式会社の会社設立をする場合、実質的支配者は自分です。迷うところはありません。
自分が発起人で、設立時発行株式の全部を引き受けます。だから議決権の100パーセントを持つことになります。
該当する理由の欄には、議決権の4分の1を超えて持っていることを選びます。割合は100パーセントです。
自分が設立時取締役でもあり代表取締役でもありますが、議決権の基準で該当するので、そちらを書くのが素直です。
氏名、住居、生年月日、国籍を書きます。印鑑証明書の表記と一致させてください。
暴力団員や国際テロリストに該当しないことを申告します。チェックを入れるだけです。
申告する人の欄にも自分の名前を書きます。発起人本人が申告する形です。
代理人が公証役場に行く場合は、代理人が申告することになります。委任状に申告についての権限を含めておく必要があります。
会社設立の準備としては、5分もあれば書ける書類です。構える必要はありません。
この書類は会社設立の登記の日程には影響しません。定款認証の当日に出すだけで、あとに残る手続きはありません。ただし、忘れると認証が受けられず、登記にも進めなくなります。
ただし、書き忘れると定款認証を受けられません。持ち物の一覧に入れておいてください。
定款、印鑑証明書、実質的支配者についての申告書、手数料、実印、本人確認書類。会社設立の準備で公証役場に持って行くものは、この六つが基本です。紙に書き出して、前日に確かめてください。
合同会社なら、この書類そのものが要りません。会社設立の工程がまた一つ軽くなります。
出典(解説)GVA 法人登記「一人会社とは?個人事業主との違い」2026年9月15日確認
複数人で会社設立をする場合

複数人で会社設立をする場合は、出資の割合で実質的支配者を判定します。
議決権の総数の4分の1を超えて持っている人が、実質的支配者になります。該当する人が複数いれば、全員を書きます。
二人で半分ずつなら、二人とも50パーセントなので両方が該当します。
三人で均等に分けるなら、一人あたり約33パーセントなので三人とも該当します。
五人で均等に分けるなら、一人あたり20パーセントなので誰も4分の1を超えません。この場合は次の基準に移ります。
事業活動に支配的な影響力を持つ人がいればその人、いなければ代表取締役になる人が実質的支配者とされます。
出資の割合は、定款の附則に書いてあります。発起人がそれぞれ引き受ける株式の数から計算できます。
会社設立の準備で出資の割合を決めるとき、この判定のことまでは考えないのが普通です。決まってから当てはめれば足ります。
ただし、誰が実質的支配者になるかは、会社の性格を示す情報でもあります。あとで金融機関に聞かれることもあります。
法人が発起人に入っている場合は、その法人を支配している個人まで遡って書きます。会社設立の場面では多くありませんが、該当するなら公証役場に相談してください。
判断に迷ったら、定款の案を送るときに一緒に聞いてください。公証人が教えてくれます。
出典(解説)マネーフォワード クラウド会社設立「会社設立時の「資本金払込」とは?」2026年9月15日確認
書き方でつまずくところ

実質的支配者についての申告書で、つまずきやすいところを挙げておきます。

いちばん多いのが、誰を書くかで迷うケースです。議決権の4分の1という基準を知っていれば判断できます。
該当する人が複数いることに気づかない、というのもあります。二人で半分ずつなら両方が該当します。
氏名と住所の表記も気をつけてください。印鑑証明書と一致させます。会社設立の他の書類と同じ考え方です。
暴力団員等に該当しないことの申告を忘れると、書類が不完全になります。チェック欄を見落とさないでください。
代理人が公証役場に行く場合は、委任状に申告についての権限を含めておく必要があります。定款認証の委任だけだと足りないことがあります。
様式が古いこともあります。公証役場からもらうか、サイトから最新のものを落としてください。
会社設立の登記の書類を作るのと同じ感覚で、定款と照らし合わせながら書いてください。発起人の氏名も出資の割合も、定款の附則に書いてあります。
出典(解説)弥生「定款認証の必要書類は?」2026年9月15日確認
公証人が確かめること

定款認証の当日、公証人は申告書の内容を確かめます。何を聞かれるのかを知っておくと、落ち着いて答えられます。
まず、書いた人が実質的支配者で間違いないかを確かめられます。出資の割合と照らし合わせる形です。
定款の附則に書いた発起人の引受株式数と、申告書の議決権の割合が合っているかを見られます。
本人確認もされます。運転免許証やマイナンバーカードを見せることになります。
会社の事業内容について聞かれることもあります。定款の目的と実際の事業が整合しているかを確かめる趣旨です。
資金の出どころを聞かれることもあります。会社設立の資本金をどこから用意したのか、という話です。
身構える必要はありません。正直に答えれば済みます。事業を始めるための普通の会社設立なら、問題になることはまずありません。
答えに詰まるようなら、事前に整理しておいてください。定款の案を送る段階で、どういうことを聞かれるかを尋ねておくのも手です。
この確認が終われば、認証の手続きに進みます。全体で30分から1時間ほどです。
会社設立の日程を組むときは、この時間も見込んでおいてください。公証役場での用事が終わったら、その足で法務局に寄るという段取りも組めます。ただし定款の謄本を受け取ってからでないと登記は出せません。
会社設立の登記のほうでは、実質的支配者についての申告は求められません。定款認証だけの手続きです。
登記官が見るのは、定款と申請書と添付書類の整合です。誰が会社を実際に支配しているかは、登記の審査の対象になりません。役割が分かれているということです。
ただし、法人口座の開設では同じ趣旨の申告を求められることがあります。控えを取っておくと、そのときに使えます。
出典(一次情報)日本公証人連合会「定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか」2026年9月15日確認
会社設立のあとに関わる場面

実質的支配者の話は、会社設立のときだけのものではありません。設立後にも出てきます。
法人口座を開設するとき、金融機関から実質的支配者について申告を求められることがあります。同じ趣旨の手続きです。
会社設立の直後は実績がないので、金融機関の確認も丁寧になります。誰が会社を持っているのかは必ず聞かれます。
定款認証のときに書いた内容と同じことを答えることになります。控えを取っておくと、そのときに使えます。
新しい取引を始めるときにも、取引先から確認されることがあります。反社会的勢力でないことの表明を求められる形です。
登記簿には発起人の氏名が載らないので、外から見ただけでは誰が会社を持っているのか分かりません。だからこうした確認が必要になります。
会社法人等番号を使って、登記簿の内容は確かめられます。ただし株主や社員の構成までは分かりません。
自分が取引の相手を確かめる側になったときも、同じことです。登記簿だけでは分からない情報があると知っておいてください。
実質的支配者に関する情報を法務局が保管する制度もあります。希望すれば、その内容を証明する書面を取れる仕組みです。
会社設立の直後に必要になることは多くありませんが、取引先から求められたときのために覚えておくと役に立ちます。
詳しくは法務局の案内で確かめてください。制度の運用は変わることがあります。
この制度は商業登記の一部として運用されています。会社設立の登記をした法務局で手続きできることが多いので、必要になったら管轄の法務局に聞いてみてください。
出典(解説)GMOあおぞらネット銀行「会社設立時の資本金の払込方法」2026年9月15日確認
まとめ

実質的支配者についての申告書は、株式会社の定款認証で必ず出す書類です。会社を実際に支配している人が誰かを申告します。
- 目的はマネーロンダリング対策。会社設立の入口で確かめる仕組み。
- 実質的支配者は、議決権の4分の1を超えて持っている自然人。
- 該当する人がいなければ、事業活動に支配的な影響力を持つ人、それもいなければ代表者。
- 一人で会社設立をするなら自分が該当。議決権は100パーセント。
- 複数人なら、4分の1を超える人が全員該当する。
- 暴力団員等に該当しないことも申告する。
- 合同会社にはこの手続きがない。定款認証そのものがないため。
会社設立の準備では、名前だけで難しそうに見える書類がいくつも出てきます。この申告書もその一つですが、中身を知れば構えるほどのものではありません。
ここに書いた内容は2026年9月15日時点のものです。様式や運用は公証役場によって細かい違いがあります。会社設立の準備を進める前に、実際に使う公証役場に確かめてください。判断に迷うときも、定款の案を送るときに一緒に聞けます。
出典(一次情報)日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」2026年9月15日確認
誰を書くかさえ決まれば、5分で済む書類です
実質的支配者についての申告書は、名前が仰々しいだけで中身は単純です。議決権の4分の1という基準を知っていれば、誰を書くかはすぐ決まります。一人で会社設立をするなら、自分の名前を書くだけです。
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