資本金はいくらにするか|税・許認可・融資から決める線と、現物出資
会社設立の資本金をいくらにするかの判断材料です。登録免許税、消費税の1,000万円、許認可の下限、そして現物出資という方法まで。
会社設立の資本金をいくらにするか決めかねている人に向けた記事です。金額によって何が変わるのかを、税金と許認可と信用の面から整理しました。
資本金は1円からでも会社設立ができます。ただ、額によって税金も許認可も信用も変わります。何をいくらにすると何が起きるのか。そこを知ってから決めてください。
下限はないが、意味はある

資本金の額に下限はありません。会社法では最低資本金の定めがないので、1円でも会社設立ができます。
昔は株式会社に1,000万円、有限会社に300万円という最低資本金がありました。いまはその制限がありません。
だから、手元にお金がなくても会社設立はできます。そこは心配しなくて構いません。
ただし、額を自由に決められるということは、自分で判断しなければならないということでもあります。
資本金は定款の絶対的記載事項に関わる部分です。設立に際して出資される財産の価額を定款に書きます。
そして、その額が会社設立の登記で登記簿に載ります。誰でも取れる書類に載るということです。
額によって変わるものは、大きく五つあります。登録免許税、消費税、均等割、許認可、そして信用です。
この五つを順に見ていきます。自分の事業に関わるものだけ拾ってください。
資本金は、あとから増やすことも減らすこともできます。ただし、どちらも登記が要ります。
増資の登記には登録免許税がかかりますし、減資には債権者への手続きも要ります。
だから、会社設立のときにある程度考えておくほうが楽です。あとから直すのは面倒だからです。
とはいえ、完璧な額というものはありません。判断材料を見て、納得できる線を選んでください。
定款に書く「設立に際して出資される財産の価額」が決まらないと、定款そのものが仕上がりません。会社設立の準備では、ここで止まる人が多くいます。
出典(一次情報)e-Gov法令検索「会社法」2026年9月15日確認
登録免許税との関係

会社設立の登記には登録免許税がかかります。この額が資本金と連動しています。
株式会社の設立登記は、資本金の額の1000分の7です。ただし15万円に満たないときは15万円になります。
つまり、資本金が約2,143万円までは一律15万円です。それを超えると、1000分の7で増えていきます。
合同会社は1000分の7で、6万円に満たないときは6万円です。ここが会社設立の費用の大きな差になります。
合同会社なら、資本金が約857万円までは一律6万円ということです。

ここで大事なのは、資本金を1円にしても登録免許税は安くならないということです。
株式会社なら15万円、合同会社なら6万円。ここが会社設立の費用の底になります。
だから、税を抑えるために資本金を極端に少なくする意味は、あまりありません。
逆に、資本金を大きくしすぎると、この下限を超えて登録免許税が増えていきます。
2,143万円を超える資本金にするなら、そこも計算に入れてください。
多くの会社設立では、この範囲に収まります。だから登録免許税は定額と考えてよいことが多くあります。
定款に書く額をいくらにしても、この下限までは税額が変わりません。そこは気楽に考えて構いません。
出典(一次情報)国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」2026年9月15日確認
消費税の1,000万円の線

資本金の額でいちばんはっきり効いてくるのが、消費税です。
事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上の法人は、新設法人として扱われます。
この場合、基準期間がなくても納税義務が免除されません。会社設立の1期目から消費税を納めることになります。
設立2期目も同じです。1,000万円以上の資本金で会社設立をすると、最初の2期とも課税事業者になります。
1,000万円未満なら、基準期間がないので原則として1期目と2期目は納税義務が免除されます。
999万円と1,000万円で扱いが変わるということです。ここは知らないと損をする線です。
だから、資本金を1,000万円ちょうどにする理由がないなら、それを下回る額にするのが一般的です。
会社設立の準備では、ここを見落とさないでください。あとから減資するのは面倒です。
ただし、インボイスの登録をするつもりなら、そもそも免税にはなりません。この線は意味を持たなくなります。
また、特定新規設立法人にあたる場合も、1,000万円未満でも免除されません。
親会社などの課税売上高が5億円を超える場合などが対象です。二社目を作る人は確かめてください。
自分がどちらに当たるかは、税務署か税理士に確かめてください。会社設立の前に聞いておくところです。
定款に書いてしまったあとで気づくと、定款の作り直しになります。株式会社なら認証もやり直しです。
出典(一次情報)国税庁「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」2026-09-15確認
均等割と許認可

地方税の均等割も、資本金の額で変わります。赤字でも納める税金です。
都道府県民税と市町村民税の均等割が、資本金の額と従業員の数によって決まります。
資本金が一定の額を超えると、均等割の区分が上がります。区分の分かれ目は税法で決まっています。
従業員の数でも区分が変わります。会社設立の直後で人を雇っていなければ、そこは下の区分になります。
会社設立の段階では、多くの場合いちばん下の区分に収まります。そこは気にしなくてよいことが多いでしょう。
ただし、資本金を大きくするつもりなら、均等割の区分も確かめてください。都道府県税事務所で聞けます。
次に許認可です。業種によっては、資本金の下限が要件になっていることがあります。
建設業の許可では、財産的基礎の要件があります。一般建設業では自己資本の額が問われます。
人材派遣業でも、資産の要件が決まっています。基準資産額や現預金の額が見られます。
旅行業でも、営業保証金や基準資産額の要件があります。業種によって考え方が違います。
こうした要件は所管の官庁が定めています。会社設立の前に、申請する窓口に確かめてください。
資本金の額そのものが要件になっている場合と、自己資本や基準資産額が問われる場合があります。言葉の意味が違うので、そこも確かめてください。
要件を満たさない資本金で会社設立をすると、あとから増資をすることになります。
増資には登記が要り、登録免許税もかかります。最初から要件を満たす額にしておくほうが安く済みます。
増資をすると定款の記載も実態と合わなくなることがあります。定款変更まで必要になる場合があるので、会社設立の前に要件を確かめてください。
出典(解説)HTタックス「業種別記載例付!会社設立時の事業目的の書き方」2026年9月15日確認
信用と融資

資本金は会社設立の登記で登記簿に載ります。だから、取引先や金融機関から見えます。
極端に少ないと、事業を続けられるのかと見られることがあります。1円の会社は、そこで説明が要ります。
逆に、多ければ多いほどよいというものでもありません。事業の規模に見合っているかを見られます。
目安としては、開業の費用と数か月ぶんの運転資金をまかなえる額にしておくと無難です。
会社設立の直後は、入金より先に支払いが来ます。資本金がその間のお金になります。
家賃、仕入れ、給与、社会保険料。売上が立つまでのあいだも、これらは出ていきます。
そこを資本金でまかなえないと、会社設立の直後から資金繰りに追われることになります。
開業から売上が立つまでの期間は、事業によって大きく違います。自分の事業で何か月かかりそうかを見積もってから決めてください。
創業の融資を考えているなら、自己資金の扱いも見ておいてください。
日本政策金融公庫の創業支援では、自己資金は重要な要素のひとつとされています。
ただし、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要になるとも示されています。
資本金と自己資金は同じものではありませんが、どこからお金を用意したかは見られます。
会社設立の前に、日本政策金融公庫や取引先の金融機関に相談しておくと判断しやすくなります。
定款と登記事項証明書は、融資の申込みでも出すことになります。そのときに資本金の額が見られます。
出典(一次情報)日本政策金融公庫「START 政策金融公庫の創業支援 Q&A」2026-09-15確認
現物出資という方法

資本金を増やしたいけれど現金がない。そういうときに使えるのが現物出資です。
現物出資というのは、金銭以外の財産で出資することです。パソコン、車、機械、不動産などが対象になります。
すでに持っているものを会社に出資する形です。会社設立の準備で、現金を用意せずに資本金を増やせます。
出資したものは会社の資産になります。減価償却の対象になるので、経費として落としていけます。
ただし、手続きが増えます。金銭の払込に比べると、用意する書類が多くなります。
まず、定款に書くことが増えます。誰が、どの財産を、いくらと評価して出資し、何株を割り当てるか。
財産を特定できるように書きます。車ならメーカー名、年式、車体番号。パソコンならメーカー名と型番です。
次に、調査報告書と財産引継書を作ります。会社設立の登記の添付書類になります。
評価額が適正かどうかが問題になります。高く見積もりすぎると、あとで責任を問われることがあります。
価額が著しく不足する場合、発起人と設立時取締役が連帯して不足分を支払う義務を負うとされています。
だから、中古の相場を調べて、その範囲で評価することになります。
会社設立の登記でも、この評価の根拠を見られることがあります。資料を残しておいてください。
定款に書いた価額と、調査報告書に書いた評価が食い違っていると指摘されます。同じ額で通してください。
出典(解説)マネーフォワード クラウド会社設立「現物出資とは?会社設立で失敗しないための仕訳例やメリット・デメリット」2026-09-15確認
現物出資の500万円の線

現物出資には、検査役の調査という手続きがあります。会社法で定められたものです。
裁判所が選んだ検査役が、財産の価額が適正かを調べます。時間も費用もかかる手続きです。
ただし、一定の場合には不要とされています。会社法33条10項に例外が定められています。
その一つが、定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合です。
つまり、現物出資が500万円以下なら、検査役の調査は要りません。会社設立の実務では、この範囲に収めるのがふつうです。
ほかにも、市場価格のある有価証券の場合や、弁護士・公認会計士・税理士などの証明を受けた場合があります。
不動産を現物出資する場合は、これらの証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も必要とされています。
会社設立の段階で不動産を現物出資するのは、手続きが重くなります。すすめられる場面は多くありません。
現実的なのは、パソコンや機械や車など、500万円に収まる範囲の動産です。
この範囲なら、定款に書いて調査報告書と財産引継書を付けるだけで足ります。
書類は増えますが、手続きとしては会社設立の登記の枠内に収まります。裁判所に行く必要はありません。
ただし、資産によっては名義の変更が要ります。車なら移転登録、不動産なら所有権の移転登記です。
現物出資を使うなら、会社設立の登記の前に法務局の登記手続案内で確かめておいてください。
定款の書き方も、金銭だけの出資とは変わります。附則に書く形が一般的なので、記載例を見ながら作ってください。
出典(解説)司法書士法人はやみず総合事務所「会社設立に現物出資を含む場合の注意点」2026-09-15確認
資本金と資本準備金

払い込んだお金の全部を資本金にしなければならない、というわけではありません。
会社法では、払込金額の2分の1を超えない額を資本金として計上しないことができるとされています。
資本金にしなかった分は、資本準備金になります。会社のお金であることは変わりません。
たとえば1,000万円を払い込んで、500万円を資本金、500万円を資本準備金にするという形です。
こうすると、登記簿に載る資本金の額は500万円になります。消費税の1,000万円の線を下回ります。
均等割の区分も、資本金の額で見られる部分があります。そこでも差が出ることがあります。
つまり、手元のお金を減らさずに、登記簿上の資本金だけを抑えられるということです。
ただし、資本準備金は登記事項ではありません。だから外からは見えません。
信用の面で資本金を大きく見せたいなら、この方法は逆に働きます。そこは目的しだいです。
会社設立の定款や発起人の決定書に、資本金として計上する額を書くことになります。
書き方に決まりがあるので、法務局の記載例を見て作ってください。
この方法を使うかどうかは、税理士に相談してから決めるのが安全です。
定款の作り方そのものは変わりません。発起人の決定書で資本金として計上する額を決める形になります。
出典(解説)税理士法人松本「会社設立時の現物出資って何?メリットやデメリットを解説」2026-09-15確認
まとめ

資本金の額は自由ですが、いくつかの線を知っておくと決めやすくなります。
- 下限はない。1円でも会社設立はできる。
- 登録免許税は株式会社15万円、合同会社6万円が下限。資本金を減らしても、ここより安くならない。
- 資本金1,000万円以上だと、設立1期目から消費税の課税事業者になる。
- 許認可の要件で資本金の下限が決まっている業種がある。所管の官庁に確かめる。
- 目安は、開業の費用と数か月ぶんの運転資金をまかなえる額。
- 現金がなければ現物出資という方法がある。500万円を超えなければ検査役の調査は不要。
- 払込額の2分の1までを資本準備金にできる。登記簿上の資本金だけを抑えられる。
ここに書いた税と会社法の内容は、国税庁の資料および会社法にもとづく2026年9月15日時点のものです。許認可の要件は所管の官庁が定め、税の判断は事業の中身によって変わります。会社設立の登記の前に、法務局の登記手続案内と、税務署か税理士に確かめてください。
出典(解説)マネーフォワード クラウド会社設立「会社設立時の「資本金払込」とは?」2026年9月15日確認
1,000万円未満にしておく。まずそこからです
消費税の線がいちばんはっきりしています。1,000万円を超える資本金にする理由がないなら、それを下回る額にしてください。あとは開業の費用と数か月ぶんの運転資金から、必要な額を積み上げるだけです。
払込の手順と払込証明書の作り方については、それを扱った記事があります。会社設立の登記に進む前に確かめてください。
登記のあとに待っている、税務・社会保険まで任せられる所
会社設立の登記が終わっても、税務署への届出や社会保険の手続きは残ります。定款の内容によって決算期も変わるので、登記と合わせて相談先を決めておくと迷いません。※弊社調べになります。
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