株式会社と合同会社で、会社設立の流れはどこが変わるか|工程・日数・費用の差
同じ会社設立でも、株式会社と合同会社では定款の認証が要るかどうかで工程がひとつ違います。登記の申請書も添付書類も変わります。その差を工程ごとに並べます。
会社を作ることは決めたが、株式会社にするか合同会社にするかで迷っている人に向けた記事です。税金の扱いではなく、会社設立の登記と定款の手続きがどれだけ違うのかを見ていきます。すでにどちらかに決まっている人は、その種類の申請書の書き方の記事に進んでください。
株式会社と合同会社は、できあがったあとの税金の扱いはほとんど同じです。違うのは、そこに至るまでの道のりと、外から見たときの受け取られ方です。とくに会社設立の登記の手前にある定款の認証が、あるかないかで全体の重さが変わります。
分かれ目はひとつ、定款の認証が要るかどうか

会社設立の工程を並べてみると、株式会社と合同会社の違いはほとんど一か所に集まっています。定款の認証です。株式会社の定款は公証人の認証を受けないと効力が生じません。合同会社の定款には、その手続きがありません。
この一つがあるかないかで、工程がひとつ増減します。公証役場を探し、定款の案を送って見てもらい、予約を取り、当日行って認証を受ける。この一連が株式会社にはあります。合同会社では、定款ができたらそのまま資本金の払い込みに進めます。
費用でいうと、認証の手数料が3万円から5万円かかります。資本金100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円です。令和6年12月1日からは、条件を満たすと1万5,000円になる仕組みも設けられました。合同会社にはこの費用がまるごとありません。
日数でいうと、公証役場の予約が入るぶん、1週間前後は余分に見ておくことになります。混んでいる時期はもっとかかります。会社設立を急いでいるなら、この差はかなり大きく効いてきます。
なぜ株式会社だけ認証が要るのかというと、株式会社は出資者と経営者が分かれることを前提にした仕組みだからです。あとから株主になる人が定款の内容を信用できるよう、第三者である公証人が確かめておく。そういう建てつけになっています。合同会社は出資者が自分で業務を執行する形なので、その必要が薄いと考えられています。
なお、認証が要らないからといって合同会社の定款が軽く扱われるわけではありません。会社設立の登記には定款を添えますし、登記官が中身を見ます。絶対的記載事項が欠けていれば当然通りません。公証人が先に確かめてくれるぶん、株式会社のほうが登記の段階での事故は少ない、という言い方もできます。
つまり認証の有無は、手続きの都合ではなく会社の性格から来ている違いです。会社設立でどちらを選ぶかを考えるときは、ここが出発点になります。
出典(一次情報)日本公証人連合会「9-4 定款認証」2026年9月15日確認
工程を並べて比べる

会社設立の工程を、二つ並べて見てみます。決める、作る、認証、払込、申請、完了。株式会社はこの六つで、合同会社は認証を抜いた五つです。

定款の中身も違います。株式会社の絶対的記載事項には発行可能株式総数が入りますが、合同会社には株式がないので出てきません。代わりに、社員が有限責任であること、それぞれの社員の出資の目的と価額を書きます。
登記の申請書も違います。法務局のページを開くと、株式会社の設立登記申請書は4種類あります。取締役会を置くかどうかと、発起設立か募集設立かの組み合わせです。合同会社は1種類しかないので、迷いようがありません。
添付書類も変わります。株式会社では設立時取締役の就任承諾書と印鑑証明書が要りますが、合同会社では代表社員の印鑑証明書が中心で、枚数が少なくて済みます。会社設立を自分で進めるなら、この差は実感として大きいところです。
印鑑届書は、どちらの会社でも登記と同時に出すのが普通です。会社の実印を法務局に届け出る書類で、これを出しておかないと印鑑カードがもらえず、会社の印鑑証明書も取れません。会社設立の直後は銀行口座の開設などで印鑑証明書を使うので、忘れずに一緒に出してください。
完了までの日数は、準備の進み具合にもよりますが、株式会社で3週間から4週間、合同会社で2週間から3週間というあたりが目安です。合同会社のほうが1週間ほど早く終わる計算になります。
出典(解説)弥生「合同会社設立の流れは?」2026年9月15日確認
費用の差は、実費だけで9万円から13万円

会社設立で必ずかかる実費を、二つ並べてみます。司法書士に頼まず自分でやる前提です。
登録免許税は、株式会社の設立登記なら資本金の額の1,000分の7で、15万円に満たないときは15万円です。合同会社は同じ税率で、最低額が6万円です。ここで9万円の差が付きます。
定款の認証手数料は、株式会社が3万円から5万円、合同会社は0円です。ここでさらに3万円から5万円の差が付きます。合わせると12万円から14万円の差になります。

紙で定款を作ると、そこに収入印紙4万円を貼ります。これはどちらの会社でも同じです。電子定款にすれば、どちらもかかりません。合同会社は認証が要らないので、電子定款にする手間だけで4万円が浮く計算になります。
司法書士に頼む場合の報酬も、会社の種類で変わります。株式会社のほうが工程が多いぶん高くなるのが一般的です。定款の作成から認証の代理、登記の申請までを頼むか、登記だけを頼むかでも金額が動きます。見積もりを取るときは、どこまで含まれているかを必ず確かめてください。
この差をどう見るかは、事業の規模によります。年に数千万円を動かす事業なら12万円は誤差かもしれません。手元の資金が限られている段階なら、この差は決め手になりえます。会社設立の費用を抑えたいという理由で合同会社を選ぶ人は少なくありません。
出典(一次情報)国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」2026年9月15日確認
株式会社の設立登記は最低15万円、合同会社は最低6万円。
外から見たときの違い

手続きの軽さでは合同会社に分がありますが、外から見たときの受け取られ方は別の話になります。
株式会社という名前は広く知られています。合同会社は2006年にできた比較的新しい形なので、名前を聞いたことがないという人もまだいます。取引先によっては、株式会社でないと取引しないという方針を持っているところもあります。
登記簿の見え方も違います。株式会社なら発行可能株式総数や発行済株式の総数、資本金の額が載ります。合同会社では株式に関する欄がなく、資本金の額と、業務を執行する社員・代表社員が載ります。
採用の場面でも差が出ることがあります。求人に応募する側から見て、株式会社のほうが安心だと感じる人はいます。事業の内容や待遇のほうが大事なのは確かですが、入口での印象として効くことは否定できません。
一方で、合同会社を選んでいる有名な企業も国内にいくつもあります。会社の形と事業の規模は関係がないことが、だんだん知られてきてはいます。会社設立の時点でどちらが有利かは、業種と取引先によるとしか言えません。
融資の場面ではどうかというと、日本政策金融公庫などの創業融資で会社の形が直接の条件になることはあまりありません。見られるのは事業計画と自己資金です。ただし金融機関によっては、会社設立からの期間や資本金の額を見ることがあります。登記簿に載る情報なので、どちらの会社でも同じように確かめられます。
あとから株式会社に変えることもできます。組織変更という手続きで、定款を変え、登記をやり直します。ただし費用も手間もかかるので、最初から見通しがあるなら株式会社で会社設立をしておくほうが結局は安く済みます。
出典(解説)GVA 法人登記「合同会社とは?個人事業主との違いを解説」2026年9月15日確認
意思決定の仕組みが違う

会社設立で見落とされがちなのが、意思決定の仕組みの違いです。ここは定款の書き方にも直結します。
株式会社では、出資した人が株主になり、株主総会で重要なことを決めます。日々の経営は取締役が担います。出資と経営が分かれている形です。だから、あとから出資だけをしてもらう人を迎え入れることができます。
合同会社では、出資した人がそのまま社員となり、業務を執行します。出資と経営が一体です。だから外から出資だけを受けるという形は取りにくくなります。会社設立のあとに投資を受ける見通しがあるなら、株式会社のほうが素直です。
そのぶん、合同会社は決め方の自由度が高くなっています。利益をどう分けるか、誰が代表になるかを、定款でかなり自由に決められます。出資の割合と利益の配分を一致させないこともできます。共同で事業をする相手がいる場合、この柔軟さが効くことがあります。
役員の任期も違います。株式会社の取締役には任期があり、切れたら重任の登記が要ります。定款で最長10年まで伸ばせますが、いずれは来ます。合同会社の社員には任期がないので、この登記が発生しません。会社設立のあとの手間としては、ここも差になります。
代表者の呼び方も違います。株式会社は代表取締役、合同会社は代表社員です。名刺に「代表取締役」と刷りたい、という理由で株式会社を選ぶ人も実際にいます。合同会社では「代表社員」または「CEO」などの肩書きを別に名乗ることになります。登記簿に載るのはあくまで代表社員という言い方です。
どちらの仕組みが合うかは、一緒にやる人がいるかどうか、外から出資を受けるつもりがあるかどうかで決まります。ひとりで始めて当面ひとりなら、合同会社の軽さが効きます。
出典(解説)Legal AI Insight「会社設立に必須の定款とは?会社形態ごとの記載事項や手続き」2026年9月15日確認
どちらで会社設立をするかの決め方

迷ったときは、次の三つを順に考えると答えが出やすくなります。

税金の扱いで迷う必要はありません。法人税の計算も消費税の扱いも、株式会社と合同会社で基本的に同じです。だから、税額を理由にどちらかを選ぶ場面はほとんどありません。
実務でよく見るのは、ひとりで始める人が合同会社を選び、外部からの出資や大きな取引を見込んでいる人が株式会社を選ぶ、という分かれ方です。会社設立の費用を抑えたいという理由も、合同会社を選ぶ動機としてよく挙がります。
社会保険や労働保険の扱いも同じです。どちらの会社でも、法人である以上は社会保険の適用事業所になります。役員が一人だけでも加入の対象です。会社設立の直後に年金事務所へ行くことになるのは、株式会社でも合同会社でも変わりません。
決めかねているなら、取引を予定している相手に聞いてしまうのが早いこともあります。法人であれば形は問わない、という答えが返ってくるなら、合同会社で会社設立をして構いません。
どちらにしても、定款を作って登記を申請するという骨組みは変わりません。決めたら、その会社の種類に合った様式を法務局のページから取って、書き始めることになります。
出典(解説)弥生「会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説」2026年9月15日確認
あとから株式会社に変えることはできるか

合同会社で会社設立をしておいて、事業が育ってから株式会社に変える。この道は用意されています。組織変更といいます。ただし、思っているより手間はかかります。
手続きとしては、組織変更計画を作り、社員全員の同意を得て、債権者に対する公告と個別の催告をします。公告は官報に載せるので、掲載の費用と期間が必要です。そのうえで、合同会社の解散の登記と株式会社の設立の登記を同時に申請します。
登録免許税もかかります。株式会社の設立の登記の分と、合同会社の解散の登記の分の両方です。金額は資本金の額によりますが、会社設立のときの15万円と同じくらいは見込んでおくことになります。
定款も作り直しです。株式会社の定款として必要な事項をそろえる必要があります。組織変更にあたっての定款には公証人の認証が要らない扱いですが、中身は株式会社の定款として成り立っていなければなりません。
期間は、官報公告に一定の期間を置く必要があるので、早くても1か月以上かかります。会社設立のときのように数週間で終わる話ではありません。
つまり、外から出資を受ける見通しがはっきりあるなら、最初から株式会社で会社設立をしたほうが結局は安く早く済みます。逆に、当面その予定がないなら、合同会社で始めて必要になってから考える、という選び方も十分に現実的です。
出典(解説)ベリーベスト法律事務所「定款変更のチェックポイント」2026年9月15日確認
まとめ

株式会社と合同会社で、会社設立の流れが変わるのは定款の認証のところです。株式会社は公証役場での認証が要り、合同会社は要りません。この一つが、日数にも費用にも効いてきます。
- 工程は株式会社が6つ、合同会社が5つ。認証の有無だけの差だが、そこに1週間前後かかる。
- 実費の差は12万円前後。登録免許税で9万円、定款認証で3万〜5万円。
- 定款に書く事項が違う。株式会社は発行可能株式総数、合同会社は社員の有限責任と出資の価額。
- 登記の申請書の様式は、株式会社が4種類、合同会社が1種類。
- 株式会社は出資と経営が分かれ、合同会社は一体。外から出資を受けるなら株式会社。
- 合同会社の社員には任期がないので、重任の登記が発生しない。
最後にもう一度だけ書いておくと、会社設立の登記そのものは、どちらの会社でも難しい作業ではありません。法務局が様式も記載例も無料で配っていますし、予約制の登記手続案内もあります。重いのは定款の中身を固めるところで、そこは会社の形を選ぶ話と地続きです。
ここに書いた金額や日数は2026年9月15日時点で確かめたものです。定款認証の手数料は令和6年12月に見直されたばかりで、条件によって金額が変わります。会社設立の前に、日本公証人連合会と国税庁のページで最新の案内を見てください。税金の損得まで含めた判断が要るなら、税理士に当たるのが確実です。
出典(解説)freee「合同会社を設立する流れとは?」2026年9月15日確認
決まったら、その種類の様式を開くところからです
どちらを選んでも、定款を作って登記を申請するという骨組みは同じです。違うのは、その途中に公証役場が挟まるかどうかと、使う様式が何種類あるかだけ。決めてしまえば、あとは順番に進むだけの作業になります。
株式会社にすると決めたなら、設立登記申請書の様式を扱った記事から。合同会社にすると決めたなら、合同会社の申請書と、認証が要らない理由を扱った記事が次の一歩になります。
登記のあとに待っている、税務・社会保険まで任せられる所
会社設立の登記が終わっても、税務署への届出や社会保険の手続きは残ります。定款の内容によって決算期も変わるので、登記と合わせて相談先を決めておくと迷いません。※弊社調べになります。
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