事業目的は使う場面から逆算して決める|口座・融資・許認可で見られる欄
定款の事業目的は、会社設立のあとに使う場面から逆算すると決めやすくなります。法人口座、融資、許認可で見られる欄の話です。
会社設立の登記に載る目的は、定款に書いた事業目的がそのまま写されたものです。適法性・営利性・明確性の条件、書き方の型と例、いくつ書くか、口座や許認可で見られる点、同業の登記の調べ方、目的を追加する変更登記までをまとめます。
定款のひな形を開いたところで「目的」の欄に何を書けばいいのか分からず、手が止まっている人に向けて書きました。会社設立の登記でそのまま登記簿に載る欄なので、適当に書くわけにもいかない。かといって、どこまで細かく書けばいいのかの目安もない。そういう段階の人が、自分の会社の目的を一通り書き出せるところまでを目指します。
会社の目的は、定款の第2条あたりに置かれる短い条文です。けれども、会社設立の登記をすると登記簿の「目的」の欄にそのまま載り、銀行や取引先、許認可の窓口が必ず目を通す欄になります。書き方には法律上の条件があり、あとから追加するには定款変更と変更登記が要ります。このページでは、目的を決める考え方を、会社設立のときと設立後の両方から見ていきます。

会社の目的とは、その会社がどんな事業をするのかを書いたものです。会社法は、定款に必ず書かなければならない事項の一つ目に目的を置いています。目的が書かれていない定款は無効で、公証人の認証も受けられません。合同会社でも同じです。
そして、会社設立の登記では、目的が登記事項になります。株式会社なら会社法第911条第3項の最初に「目的」があり、申請書の「登記すべき事項」に定款の目的の条文を写します。登記が終わると、登記事項証明書の「目的」の欄に、番号を振った箇条書きで並びます。誰でも数百円で取れる証明書なので、目的は会社設立と同時に世間に公開される情報だと考えてください。
「事業目的」と「目的」は同じものを指しています。定款の条文の見出しは「目的」と書かれることが多く、会社設立の解説では「事業目的」と呼ばれることが多い、というだけの違いです。このページでも両方の言い方を使います。
合同会社の場合も扱いは同じで、会社法第914条により目的が設立登記の登記事項になっています。株式会社と合同会社のどちらで会社設立をするにしても、目的の決め方の考え方は変わりません。違うのは、株式会社なら公証人が認証の前に目的の文言にも目を通してくれるのに対し、合同会社では認証がないため、明確性や適法性の点検を自分でしなければならないところです。
目的の外の事業はできないのか
会社は定款の目的の範囲内で権利能力を持つ、とされています。ただし、実際の判断では目的の範囲はかなり広く解釈されていて、目的に直接書いていない取引でも、目的の遂行に必要なものなら範囲内とされます。それでも、許認可や融資の場面では登記簿の文言そのものが見られるので、主な事業はきちんと書いておくのが基本です。
出典(一次情報)e-Gov法令検索「会社法」2026年9月15日確認
会社法第27条第1号で定款の記載事項、第911条第3項第1号で株式会社の設立登記の登記事項として「目的」が挙げられています。

目的の書き方には、守らなければならない条件が三つあります。どれも、会社設立の登記を受け付けてもらえるかどうかに関わります。
以前は「具体性」も求められていて、「商業」「事業」のような漠然とした書き方は登記を受け付けてもらえませんでした。平成18年に会社法が施行されてから、具体性は登記の審査では問われなくなっています。極端に言えば、とても広い書き方でも会社設立の登記自体は通る可能性があります。
ただし、登記が通ることと、使える目的であることは別です。何をしている会社か分からない目的では、口座の開設や許認可の申請で説明を求められます。具体性の審査がなくなったからこそ、自分で程よい具体性を保つ必要がある、と考えておくのが実務的です。
迷う語句があるときは、株式会社なら定款の案を公証役場に送る段階で、合同会社なら登記の申請前に法務局の登記相談で確かめておくと、会社設立の登記をやり直すような事態を避けられます。
出典(解説)RSM汐留パートナーズ司法書士法人「会社の事業目的と登記」2026年10月18日確認
会社法施行後は目的の具体性を問わないとされ、明確性・適法性・営利性が求められると説明されています。

定款の目的の条文は、「当会社は、次の事業を営むことを目的とする。」という一文のあとに、号を振って事業を並べる形が一般的です。一つひとつの号は、「何を」「どうする」の組み合わせで書くと、明確で読みやすくなります。

最後の「前各号に附帯関連する一切の事業」は、ほとんどの定款に入っている号です。並べた事業に付随する取引を広く拾うためのもので、会社設立の段階で書き漏れた細かい業務をある程度カバーしてくれます。ただし、まったく別の新しい事業までは拾えません。
書くときの注意として、言い回しは定款と登記簿で完全に一致させます。登記すべき事項に写すときに、句読点や「及び」「並びに」を勝手に整えないことです。また、英語やローマ字だけの目的は避け、必要なら日本語の説明を添えます。
くわしくはこちらの記事定款の事業目的の書き方|適法性・明確性と、業種別の書き方の型定款の事業目的の書き方と、実際の書き方の例です。会社設立の登記でそのまま登記簿に載るので、後から効いてくる項目です。出典(解説)HTタックス「業種別記載例付!会社設立時の事業目的の書き方」2026年9月15日確認
業種別の記載例とともに、適法性・営利性・明確性に沿った書き方が示されています。

目的の数に法律上の上限はありません。会社設立のときに5つから10個ほど並べる会社が多く、二つや三つで済ませる会社もあります。数よりも、登記簿の目的の欄を見た人が「この会社は何をしているのか」を読み取れるかどうかが大事です。

会社登記の目的の種類を考えるときは、①いま主にやる事業、②それに付随して起こる事業、③2〜3年のうちに始めるつもりの事業、の三つに分けて書き出すと整理できます。③を会社設立のときに入れておけば、あとから変更登記をする3万円と手間が浮きます。
反対に、まったく関係のない業種を並べすぎると、何の会社か伝わらなくなります。金融機関の担当者が目的の欄を見て首をかしげるような並びは避けたほうが無難です。
並べる順番にも気を配ります。登記簿の目的の欄は、定款に書いた順に表示されます。主力の事業を1番目に置いておくと、証明書を見た人に会社の中身が一目で伝わります。会社設立の時点ではまだ売上の柱が決まっていないなら、いちばん時間を割く予定の事業を先頭にしてください。
出典(解説)弥生「定款の事業目的の書き方は?」2026年9月15日確認

目的の書き方で失敗しやすいのは、会社設立の登記のことだけを考えて決めてしまうことです。目的が本当に効いてくるのは、登記が終わったあとです。
許認可が要る事業を始めるなら、会社設立の前に、許可を出す窓口に目的の文言を確認するのがいちばん確実です。たとえば古物商なら「古物営業法に基づく古物商」のように法律の名前を入れた書き方が使われます。窓口によって求める表現が違うことがあるので、ひな形の文言を鵜呑みにしないでください。
くわしくはこちらの記事事業目的は使う場面から逆算して決める|口座・融資・許認可で見られる欄定款の事業目的は、会社設立のあとに使う場面から逆算すると決めやすくなります。法人口座、融資、許認可で見られる欄の話です。出典(解説)freee「定款の事業目的はどう書く?」2026年9月15日確認
許認可が要る事業は、定款の事業目的に記載しておく必要があると説明されています。

目的の文言で迷ったら、同じ業種の会社の登記を見るのが早道です。実際に登記が通っている文言なので、明確性の点では安心できますし、許認可を持っている会社なら、窓口が受け入れた書き方を知ることにもなります。
調べ方はいくつかあります。法務局の窓口で登記事項証明書を取る方法(書面請求で1通600円)、オンラインで請求して郵送してもらう方法、そして一般財団法人民事法務協会の登記情報提供サービスで画面に表示させる方法です。目的を参考にするだけなら、登記情報提供サービスがいちばん手軽で、全部事項が1件330円です。
そのまま写すのではなく、自分の会社の事業に合わせて取捨選択することが大事です。同業の会社が持っている目的でも、自分が当面やらない事業まで入れる必要はありません。
登記情報提供サービスは、利用登録をしなくてもクレジットカードで一時利用ができます。同じ画面で、同じ本店所在地に同じ商号の会社がないかも確かめられるので、目的と商号をまとめて調べておくと、会社設立の準備が一度に進みます。
くわしくはこちらの記事同業の登記を見て事業目的を決める|登記情報提供サービスを会社設立の準備に使う会社設立の定款に書く事業目的を決めるとき、同業の会社の登記を見るのがいちばん早い方法です。調べ方と、見るべきポイントをまとめます。出典(一次情報)民事法務協会 登記情報提供サービス「利用料金」2026年9月15日確認
商業・法人登記情報の全部事項は1件330円とされています。

会社設立の登記の申請書では、目的は「登記すべき事項」の中に書きます。量が多いので、別紙にまとめて綴じるか、登記・供託オンライン申請システムで登記すべき事項だけを送るのが一般的です。
書き方は、「目的」という見出しの下に、定款と同じ番号と文言で事業を並べます。定款の条番号や「当会社は、次の事業を営むことを目的とする。」の一文は入れません。株式会社の定款を公証役場で認証してもらった場合は、認証を受けた文言が正しいものなので、それを一字ずつ写します。
よくある写し間違い
「及び」を「・」に変えた、送り仮名を直した、号の順番を入れ替えた、といった小さな違いでも、定款と登記の内容が食い違うことになります。会社設立の登記で補正の連絡が来る原因の一つです。書き終えたら、定款と横に並べて読み合わせてください。
目的が登記されると、会社設立の日以降に取る登記事項証明書にそのまま表示されます。申請書を出す前に、許認可の窓口で求められた文言が入っているかを最後にもう一度確かめておくと安心です。
オンラインで登記すべき事項を送る場合も、中身は同じです。送信前の画面で目的の号を一つずつ数え、定款の号の数と合っているかを見てください。号が一つ抜けたまま会社設立の登記が完了すると、定款と登記簿が食い違った状態になり、登記を正すための申請をあらためて出すことになります。せっかく会社設立の日をそろえて申請したのに、設立直後から余計な手続きを抱えることになるので、送信前の数分の見直しを惜しまないでください。
出典(一次情報)法務省「登記・供託オンライン申請システムによる登記事項の提出について」2026年9月15日確認
登記すべき事項を、登記・供託オンライン申請システムで提出する方法が案内されています。

会社設立のあとで新しい事業を始めるときは、目的を追加します。定款の目的の条文を書き換え、そのうえで法務局に目的の変更登記を申請する、という二段階の手続きです。定款を書き換えただけでは、登記簿の目的の欄は変わりません。

申請書の「登記すべき事項」には、追加した号だけでなく、変更後の目的をすべて書くのが基本です。追加分だけを書くと、目的の欄がその内容に置き換わったように読めてしまうおそれがあります。いまの登記事項証明書の目的の欄を写し、そこに新しい号を加えて書き直してください。
変更から2週間を過ぎても申請は受け付けてもらえますが、登記を怠ったとして過料の対象になることがあります。登録免許税は3万円で、号をいくつ追加しても同じです。会社設立のときに近い将来の事業まで入れておけば、この3万円と手間を一度省けます。
合同会社が目的を追加するときは、定款に別段の定めがなければ社員全員の同意で定款を変更し、同意書を作って変更登記を申請します。登録免許税は株式会社と同じ3万円です。株式会社でも合同会社でも、商号の変更など別の変更登記と同時に出せば、同じ区分の登記として1件分の登録免許税で済む場合があります。
出典(一次情報)国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」2026年9月15日確認
登記事項の変更は申請件数1件につき3万円とされています。
目的を決めるのは、むずかしい法律の作業ではありません。いまやること、それに付いてくること、数年のうちに始めること。この三つを書き出し、同業の登記で言い回しを確かめれば、会社設立の登記に使える目的はほぼできあがります。
許認可が要る事業だけは、会社設立の前に窓口へ。そこさえ押さえれば、あとから困ることはまずありません。
登記のあとに待っている、税務・社会保険まで任せられる所
会社設立の登記が終わっても、税務署への届出や社会保険の手続きは残ります。定款の内容によって決算期も変わるので、登記と合わせて相談先を決めておくと迷いません。※弊社調べになります。
定款の事業目的は、会社設立のあとに使う場面から逆算すると決めやすくなります。法人口座、融資、許認可で見られる欄の話です。
定款の事業目的の書き方と、実際の書き方の例です。会社設立の登記でそのまま登記簿に載るので、後から効いてくる項目です。
会社設立の定款に書く事業目的を決めるとき、同業の会社の登記を見るのがいちばん早い方法です。調べ方と、見るべきポイントをまとめます。
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