会社設立の相談先を使い分ける|法務局・公証役場・士業・商工会議所
会社設立の登記と定款について、どこに何を聞けばよいのかを整理します。法務局、公証役場、司法書士、税理士、商工会議所。それぞれ答えられる範囲が違います。
会社設立の準備を進めていて、疑問が出るたびにどこに聞けばいいのか分からなくなる人に向けた記事です。法務局に聞いたら「それは税務署です」と言われ、税務署に聞いたら「それは法務局です」と言われる。そんな行き違いを避けるための整理です。
会社設立の準備では、聞きたいことが次々に出てきます。ところが窓口はいくつもあって、それぞれ答えられる範囲が決まっています。役所は自分の所管の外のことには答えません。どこに何を聞けばいいのかを先に整理しておくと、無駄な電話が減ります。
相談先は五つに分けられる

会社設立の相談先は、大きく五つに分けられます。それぞれ扱う範囲が違うので、聞きたいことに合わせて選ぶことになります。
一つめが法務局です。登記の手続きを扱います。申請書の書き方、添付書類の範囲、登録免許税の計算。会社設立の登記に関することはここです。
二つめが公証役場です。定款の認証を扱います。株式会社の定款の内容について、認証の前に見てもらえることがあります。合同会社では使いません。
三つめが士業です。司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士。それぞれ扱える範囲が法律で決まっています。
四つめが商工会議所や商工会です。創業の相談全般に応じています。事業計画や資金調達の相談ができるところが多くあります。
五つめが市区町村です。創業支援の制度、特定創業支援等事業の証明書、地域の補助金。会社設立の登録免許税の軽減に関わるのもここです。
このほかに、日本政策金融公庫や信用保証協会といった金融の窓口もあります。会社設立にあたって融資を考えているなら、そちらも相談先になります。
どこも無料で相談に応じてくれるところが多くあります。会社設立の準備では、お金をかけずに聞ける窓口をうまく使うことが大事です。
相談先ごとに、無料かどうかも違います。法務局の登記手続案内、公証役場での事前確認、商工会議所の創業相談。これらは無料であることが多くあります。士業への相談は、初回無料としている事務所もあれば有料のところもあります。会社設立の費用を抑えたいなら、無料の窓口から当たってください。
逆に言えば、どこに聞いても答えが得られない質問もあります。「どちらが得か」といった判断は、最終的には自分で決めることになります。
出典(一次情報)法務局「登記手続案内」2026年9月15日確認
法務局に聞くこと

法務局が扱うのは登記です。会社設立の登記に関することなら、ここが本家です。
申請書の書き方を聞けます。この欄に何を書くか、この文言でよいか。記載例を見ても分からないところを具体的に聞けます。
添付書類の範囲も聞けます。自分の定款ならどの書類が要るのか、通数はいくつか。会社設立の登記でいちばん迷うところです。
登録免許税の計算も確かめてもらえます。資本金の額から計算した税額が合っているか、軽減措置を使う場合の書き方はどうか。
管轄の確認は電話で済みます。本店の住所を伝えれば、担当する法務局かどうかを教えてもらえます。会社設立の登記を出す前に必ず確かめてください。
受付時間、郵送の宛先、収入印紙の売り場。こうした事実の確認も電話で聞けます。予約は要りません。
書類を見てもらいたいなら、登記手続案内を予約します。予約制で無料、1回20分以内という運用の法務局が多くあります。
聞けないのは、会社の設計に関わることです。株式会社と合同会社のどちらがよいか、資本金をいくらにすべきか。これらは範囲外です。
登記が完了したあとのことも、法務局では扱いません。税務署への届出、社会保険の加入、銀行口座の開設。会社設立の登記が終わったら、相談先はそれぞれの所管に移ります。
税金のことも聞けません。法務局は登記を扱う役所であって、税務署ではありません。会社設立の税務は税理士か税務署です。
出典(解説)GVA 法人登記「法人登記について法務局への相談・問い合わせ方法」2026年9月15日確認
公証役場に聞くこと

公証役場が扱うのは、公正証書の作成と認証です。会社設立の場面では、株式会社の定款認証で関わります。
多くの公証役場は、認証の前に定款の案を送るよう求めています。メールかファクスで送ると、公証人が目を通して、直すところがあれば連絡が来ます。
つまり、定款の内容を専門家に見てもらえる機会が、会社設立の工程の中に組み込まれているということです。これを使わない手はありません。
絶対的記載事項が欠けていないか、条文どうしに矛盾がないか。こうした形式的な点は見てもらえます。会社設立の登記に進む前の関門になります。
手数料や持ち物、予約の取り方も聞けます。資本金の額によって手数料が変わるので、自分の会社ならいくらかを確かめておいてください。
電子定款にする場合の進め方も聞けます。データの渡し方、当日に持って行くもの、同一の情報の提供の受け方。役場によって案内が違うので、必ず確かめてください。
聞けないのは、事業の内容に照らして目的をどう書くべきか、といったことです。形式は見てもらえますが、経営の判断は範囲外です。
合同会社では認証がないので、公証役場は使いません。そのぶん定款を見てもらう機会がないので、ひな形選びと自己点検が大事になります。
定款認証の予約が取りにくい時期もあります。年度末や月初は会社設立が集中するので、公証役場も混みます。日程を組むときは、予約の空きを先に確かめてください。
公証役場は平日の日中だけで、昼休みを挟むところが多くあります。会社設立の日程を組むときは、営業時間も確かめておいてください。
出典(一次情報)日本公証人連合会「9-4 定款認証」2026年9月15日確認
士業に聞くこと

士業はいくつもあって、それぞれ扱える範囲が法律で決まっています。会社設立の相談で誰に何を頼めるかを整理しておきます。

会社設立の登記の申請を代理できるのは、司法書士と弁護士です。行政書士も税理士もできません。丸ごと頼むなら司法書士です。
行政書士は定款の作成と電子定款の作成、許認可の申請を扱います。電子定款だけを頼むという使い方をする人が多くあります。
税理士は、会社設立のあとの税務を扱います。決算期をいつにするか、消費税の扱いがどうなるか。こうした判断は税理士に聞くことになります。
社会保険労務士は、社会保険と労働保険の手続きです。会社設立の直後に年金事務所へ出す書類がここに当たります。
会社設立を丸ごと扱う事務所は、こうした資格者が連携していることが多くあります。誰が何をするのかを見積もりの段階で確かめてください。
どの士業に頼むかで、会社設立の費用も変わります。司法書士に丸ごと頼めば報酬が乗りますが、電子定款だけを行政書士に頼むなら数万円で済みます。自分がどこで詰まりそうかを見極めて、その部分だけを外に出すという選び方ができます。
無料相談を実施している事務所もあります。会社設立の相談なら初回無料、という形です。頼むかどうかを決める前に、話を聞いてみるのもありです。
出典(一次情報)日本司法書士会連合会「日本司法書士会連合会」2026年9月15日確認
商工会議所と市区町村に聞くこと

商工会議所や商工会は、地域の事業者を支える団体です。創業の相談にも応じていて、会社設立の前後で使えます。
事業計画の作り方、資金繰りの考え方、補助金や融資の情報。会社設立の登記そのものではなく、その前後の話を相談できます。
創業塾やセミナーを開いているところもあります。市区町村の特定創業支援等事業として実施されていることが多く、受講すると登録免許税の軽減の証明書がもらえることがあります。
市区町村の産業振興の担当課も相談先です。創業支援の制度、地域の補助金、事業所の紹介。地域によって用意されているものが違います。
特定創業支援等事業の証明書は、市区町村が出します。会社設立の登録免許税が半額になる制度なので、使えるかどうかを確かめる価値があります。
証明書をもらうには数か月かかることもあります。会社設立を急いでいるなら向きませんが、時間があるなら調べてみてください。
日本政策金融公庫も相談先です。創業融資を扱っていて、会社設立の前から相談できます。事業計画を持って行くと具体的な話ができます。
信用保証協会も、創業関連保証という仕組みを持っています。金融機関から借りるときに保証を付けてもらう形です。
地域によっては、創業支援の窓口を一か所にまとめているところもあります。ワンストップの相談窓口という形で、市区町村と商工会議所と金融機関が連携しているものです。会社設立を考えているなら、住んでいる地域にそういう窓口があるかを調べてみてください。
こうした窓口は、登記や定款のことは扱いません。会社設立の手続きそのものは法務局や公証役場、事業のことは商工会議所や市区町村、と分けて考えてください。
出典(一次情報)中小企業庁「会社設立時の登録免許税の軽減について」2026年9月15日確認
聞く順番を決めておく

相談先が分かっても、順番を間違えると効率が悪くなります。会社設立の準備の流れに沿って、いつ誰に聞くかを決めておきましょう。
最初に決めるのは、会社の形と事業の内容です。株式会社か合同会社か、何をする会社にするか。ここは商工会議所や税理士に相談するのが向いています。
許認可が要る事業なら、その窓口に早めに当たってください。定款の事業目的にどういう文言が要るかを確かめておかないと、あとで会社設立の登記をやり直すことになります。
次に定款を作ります。株式会社なら公証役場に案を送って見てもらえます。合同会社ならその機会がないので、ひな形選びと自己点検が大事です。
定款ができたら、法務局の登記手続案内を予約します。この定款ならどの様式を使い、どの添付書類が要るのかを確かめられます。
書類がそろったら、もう一度案内を使って見てもらう手もあります。会社設立の登記を出す直前の最終確認です。
登記が完了したら、税務署と年金事務所です。ここは税理士と社会保険労務士の領域でもあります。
融資を考えているなら、会社設立の前から日本政策金融公庫に相談しておくと話が早くなります。設立後すぐに申し込める準備ができます。

この順番で進めれば、同じことを何度も聞くことになりません。会社設立の準備は工程が多いので、聞く相手を間違えないだけで時間がかなり節約できます。
出典(解説)鈴木税理士事務所「はじめてでも自分でできる!会社設立の流れ・全手順」2026年9月15日確認
答えが得られないときの考え方

会社設立の準備では、誰に聞いても答えが得られない質問があります。役所も士業も、判断を代わりにしてくれるわけではないからです。
「株式会社と合同会社のどちらがよいか」という質問がその典型です。費用や手続きの違いは教えてもらえますが、どちらにすべきかは事業の内容と見通し次第です。
「資本金をいくらにすべきか」も同じです。登録免許税の計算や消費税の扱いは教えてもらえますが、いくらが適切かは事業の規模によります。
「事業目的をいくつ書くべきか」も答えが一つに定まりません。多すぎると絞りが見えず、少なすぎるとあとで足すことになる。判断材料をもらって、自分で決めることになります。
こういう質問をするときは、聞き方を変えると答えが得られます。「どちらがよいか」ではなく「それぞれの場合に何が起きるか」と聞くのです。
会社設立の登記で言えば、「この定款だとどの添付書類が要るか」は答えてもらえます。「どういう定款にすべきか」は答えてもらえません。
判断材料をそろえて、最後は自分で決める。会社設立とはそういう手続きです。定款に何を書くかを決めるのは、会社を作る人の仕事です。
会社設立の登記や定款についての質問なら、たいていは答えが出ます。制度として決まっていることだからです。答えが出ないのは、決まっていないこと——つまり自分が決めるべきことを聞いているときです。そこを区別できると、相談が空回りしません。
迷ったまま進めるより、複数の窓口で聞いてみるのも手です。法務局と公証役場と商工会議所で、それぞれ違う角度から材料が得られます。
他人の意見を聞きすぎて決められなくなる、というのもよくある話です。会社設立の相談先が多いのは助かることですが、聞くたびに違うことを言われて迷いが深まることもあります。判断材料がそろったと思ったら、そこで区切って決めてください。
それでも決めきれないなら、あとから変えられるかどうかで判断してください。定款は変更できますし、資本金も増やせます。会社の形だけは変えるのが重いので、そこは慎重に決めます。
出典(解説)司法書士法人まちたま「会社設立を自分でやる場合と依頼した場合の費用の比較」2026年9月15日確認
まとめ

会社設立の相談先は、法務局、公証役場、士業、商工会議所や市区町村、金融の窓口に分かれます。それぞれ扱う範囲が違うので、聞きたいことに合わせて選びます。
- 登記の手続きは法務局。申請書、添付書類、登録免許税、管轄。予約制の登記手続案内は無料。
- 定款の認証は公証役場。株式会社なら、認証の前に案を見てもらえる。
- 登記の代理ができるのは司法書士と弁護士だけ。行政書士は定款と電子定款、許認可。
- 税務は税理士か税務署。決算期や消費税の扱いはここ。
- 創業の相談は商工会議所や市区町村。創業支援の証明書は市区町村が出す。
- 融資は日本政策金融公庫や信用保証協会。会社設立の前から相談できる。
- 「どちらがよいか」は誰にも答えられない。判断材料をもらって自分で決める。
会社設立は一度きりの手続きなので、慣れている人はいません。分からないことがあって当たり前です。無料で聞ける窓口がこれだけ用意されているのは、それが前提になっているからです。遠慮せずに使ってください。
ここに書いた区分は2026年9月15日時点のものです。士業の業務範囲は法律で定められていますが、実際の対応は事務所によって違います。会社設立の相談をするときは、その窓口で何を聞けるのかを最初に確かめると、話が早く進みます。
出典(解説)リーパル会計事務所「会社設立を司法書士に依頼するメリットは?」2026年9月15日確認
聞く先を間違えないだけで、時間がかなり節約できます
会社設立の準備では、聞きたいことが次々に出てきます。そのたびに調べるより、どこに聞けばいいのかを知っておくほうが早く済みます。登記は法務局、定款は公証役場、税務は税理士。この三つだけでも覚えておいてください。
法務局の登記手続案内の使い方を詳しく知りたいなら、そちらを扱った記事に進んでください。公証役場への相談については、定款認証の流れを扱った記事があります。
登記のあとに待っている、税務・社会保険まで任せられる所
会社設立の登記が終わっても、税務署への届出や社会保険の手続きは残ります。定款の内容によって決算期も変わるので、登記と合わせて相談先を決めておくと迷いません。※弊社調べになります。
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