事業年度の条文の書き方と、あとから決算期を変えるとき
定款の事業年度の条文をどう書くか、1期目をどう扱うか、決算期を変えるときに何をするか。会社設立の登記との関係もあわせて整理しました。
定款の事業年度の条文をどう書けばいいか調べている人と、すでにある会社の決算期を変えようとしている人に向けた記事です。条文の形と、変更の手続きの両方を扱います。
事業年度の条文は、定款のなかでいちばん短い部類です。一行で終わります。ただ、その一行の書き方でつまずくことがありますし、あとから変えるとなると手続きが要ります。
事業年度の条文の形

定款の事業年度の条文は、ほぼ決まった形をしています。自分で考える余地はほとんどありません。
「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする」。これが基本の形です。
「年1期とする」の部分は、なくても構いません。「毎年4月1日から翌年3月31日までとする」でも通ります。
事業年度が暦年と同じ場合は、「翌年」を入れません。「毎年1月1日から12月31日までとする」と書きます。
条文の置き場所は、定款の後ろのほうです。計算に関する章に置くのが通例になっています。
会社設立の定款では、商号・目的・本店・発行可能株式総数などが前に来て、事業年度はそのあとです。
この条文は会社法の絶対的記載事項ではありません。書かなくても定款が無効になるわけではありません。
ただ、法人税法では定款などに定める会計期間が事業年度とされています。だから実務では必ず書きます。
書いていないと、税務署に届け出るときに根拠がなくなります。会社設立の準備では、忘れずに入れてください。
事業年度は登記事項ではないので、登記簿には載りません。会社設立の登記でも、直接は審査の対象になりません。
ただし定款は会社設立の登記の添付書類なので、法務局に出すことになります。
株式会社なら、公証役場の定款認証でも見られます。形式に問題があれば、そこで指摘されます。
認証の前に定款の案を送って見てもらう運用をしている公証役場が多くあります。会社設立の準備では、その機会を使ってください。
出典(解説)弥生「事業年度とは?」2026年9月15日確認
書き方でつまずくところ

短い条文ですが、つまずくところがいくつかあります。会社設立の定款を作るときに気をつけてください。

まず、開始日と終了日がつながっているかを見てください。3月31日で終わるなら、始まりは4月1日です。
4月1日から3月30日まで、といった書き方にすると、3月31日が宙に浮きます。単純な書き間違いですが、起きます。
「翌年」の有無も確かめてください。年をまたぐなら「翌年」が要り、暦年と同じなら要りません。
2月を決算月にする場合は、「2月末日」と書くのが無難です。うるう年で日数が変わるからです。
「2月28日」と書いてしまうと、うるう年に1日が宙に浮きます。実務では末日と書きます。
月の途中を決算日にすることもできます。ただし、実務ではほとんど見かけません。
月末にしておくと、帳簿の締めと合います。あえて途中にする理由がなければ、月末にしてください。
定時株主総会の時期を定めた条文と、つじつまが合っているかも見てください。
「事業年度の末日の翌日から3か月以内に招集する」といった条文が入っていることがあります。
会社設立の定款は、ひな形を直して作ることが多いはずです。直し忘れがないか、通して読んでください。
ひな形の数字が残ったまま会社設立の登記に進んでしまうと、定款と実際の運用が食い違います。あとで直すには定款変更が要ります。
出典(解説)HASマネジメント「定款に記載する「事業年度」と決算日の実務的な決め方」2026年9月15日確認
設立1期目を条文に書くか

会社設立の1期目は、たいてい1年になりません。設立の日から最初の決算日までだからです。
では、そのことを定款に書く必要があるか。答えは、書かなくても構いません。
本則の条文があれば、1期目は自然に決まります。設立の日から最初に来る決算日までです。
ただ、はっきりさせておきたい場合は、附則に書くこともあります。「第1期は、会社の成立の日から令和〇年〇月〇日までとする」という形です。
これを入れておくと、読んだ人に分かりやすくなります。会社設立の登記でも、問題なく通ります。
附則には、ほかにも最初の事業年度のことや発起人の氏名などを書くことがあります。定款のひな形によって扱いが違います。
会社の成立の日というのは、会社設立の登記を申請した日です。書類が受け付けられた日のことです。
この日は、申請する前には確定しません。だから附則に日付を書くなら、「会社の成立の日から」という書き方にします。
具体的な日を書いてしまうと、申請の日がずれたときに定款と合わなくなります。気をつけてください。
会社設立の登記を出す日は、法務局の窓口の営業日に合わせることになります。土日祝日は受け付けられません。
郵送なら到着した日、オンラインなら送信した日が申請の日になります。時間帯によっては翌営業日の扱いです。
設立の日を選びたいなら、この点も見ておいてください。1期目の長さに直接効いてきます。
オンラインで会社設立の登記を送信する場合、受付の時間には区切りがあります。夕方以降の送信は翌営業日の扱いになることがあるので、日を選ぶなら早い時間に出してください。
出典(解説)マネーフォワード クラウド会社設立「会社設立時における事業年度の決め方とポイント」2026年9月15日確認
決算期を変える手続き

会社設立のあとに決算期を変えたくなることがあります。手続きを見ておきます。

まず、株主総会の特別決議で定款を変えます。議決権の3分の2以上の賛成が要ります。
株主が自分ひとりなら、書面を作るだけです。それでも議事録は作って保管してください。
定款そのものも書き換えます。会社に置いてある定款の条文を直した形にします。
ここで大事なのは、登記が要らないということです。事業年度は登記事項ではありません。
だから法務局に行く必要も、登録免許税を払う必要もありません。会社設立の登記や本店移転とは違うところです。
そのかわり、税務署への届出が要ります。異動届出書に、株主総会議事録の写しを添えて出します。
都道府県税事務所と市町村にも、同じように届け出ます。様式は自治体によって違います。
届出の期限は、税務署の場合は「遅滞なく」とされています。決めたら早めに出してください。
決算期の変更そのものに費用はかかりません。かかるのは、変則の決算をする手間です。
司法書士に頼む必要もありません。登記が絡まないので、法務局に出す書類が何もないからです。自分で議事録を作って届け出れば完了します。
出典(解説)マネーフォワード クラウド会社設立「株式会社の定款変更に必要な手続きとは?」2026年9月15日確認
変更した年の事業年度

決算期を変えると、変更した年の事業年度は1年未満になります。ここが実務でいちばん面倒なところです。
たとえば3月決算の会社が9月決算に変えるとします。4月1日から9月30日までの6か月が、一つの事業年度になります。
この6か月で決算をして、法人税の申告をします。そのあと、10月1日から新しい事業年度が始まります。
申告の期限は、原則としてその事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。変則の期間でも扱いは同じです。
決算が1回増えるということです。決算料も申告の手間も、その年だけ余分にかかります。
税理士に頼んでいるなら、この分の報酬が発生します。事前に相談しておいてください。
事業年度を長くする方向には変えられません。1年を超えられないからです。
3月決算を9月決算にする場合、18か月にはできません。必ず6か月のほうになります。
消費税の判定も、この変則の期間で行われます。基準期間や特定期間の考え方が変わることがあります。
均等割などの地方税は、月割りで計算されることがあります。半端な期間だと計算が変わります。
こうした影響があるので、決算期の変更は税理士に相談してから決めるほうが安全です。
会社設立のときに決算期をきちんと考えておけば、こういう手間は要りません。最初が肝心という話です。
とはいえ、事業が変われば決算期も合わなくなります。変えられる仕組みがあること自体は知っておいてください。
変えられないものではない、と分かっていれば、会社設立のときに完璧を求めなくて済みます。そこで何日も止まるほうがもったいないことです。
出典(解説)マネーフォワード クラウド会社設立「決算月(決算期)はいつにする?」2026年9月15日確認
合同会社の場合

合同会社の場合も、事業年度は定款で決めます。条文の形は株式会社と同じです。
違うのは、変えるときの手続きです。株主総会がないので、社員の同意によります。
会社法では、定款の変更には総社員の同意が必要とされています。全員の同意です。
ただし、定款で別の方法を定めていれば、その方法によります。過半数の同意で足りると定めることもできます。
社員が自分ひとりなら、自分で決めるだけです。それでも同意書を作って残しておいてください。
合同会社には定款認証がないので、会社設立のときに公証人のチェックを受けません。
だから、条文の書き方は自分で確かめることになります。ひな形を使うなら、直し忘れに気をつけてください。
会社設立の登記では、定款が添付書類になります。法務局が定款の形式を細かく見るわけではありません。
事業年度が登記事項でない点は、株式会社と同じです。決算期を変えても登記は要りません。
税務署や自治体への届出が必要な点も同じです。異動届出書に同意書の写しを添えます。
消費税の免税の考え方も同じです。基準期間がない1期目と2期目は、原則として納税義務が免除されます。
資本金1,000万円以上だと免除されない点も変わりません。会社の形とは別の話だからです。
合同会社でも株式会社でも、消費税の扱いは同じです。会社設立の費用や機関の設計は違いますが、税のほうは形で変わりません。
出典(解説)合同会社設立代行.com「決算月(事業年度)の決め方」2026年9月15日確認
決算期を変える理由になる場面

実際に決算期を変える会社は、どういう理由で変えるのか。よくある場面を挙げておきます。
一つめが、繁忙期と決算が重なってしまった場合です。会社設立のときには読めなかった季節の波が見えてくることがあります。
決算の作業と繁忙期が重なると、どちらも回らなくなります。数年やってみて気づく、ということが起きます。
二つめが、棚卸の都合です。在庫がいちばん多い時期に決算があると、数える手間も資金繰りの見え方も重くなります。
在庫が少ない時期に決算日を移すと、作業が軽くなります。これも実際にやってみて分かることです。
三つめが、グループ会社との関係です。親会社や関連会社と決算期をそろえたい、という事情が出てくることがあります。
連結の処理をするなら、そろっているほうが楽になります。二社目を作るときにも考えるところです。
四つめが、事業の転換です。事業の中身が変われば、お金の動く時期も変わります。
五つめが、税負担の平準化です。利益が特定の時期に偏る場合、決算期をずらすと見え方が変わることがあります。
ただし、税の目的だけで頻繁に変えるのはすすめられません。合理的な理由がないと、説明を求められることがあります。
どの場面でも、変更には変則の決算がついてきます。その手間と、変えて得られるものを比べて決めてください。
会社設立の段階でここまで見通すのは難しいことです。数年やってから見直す、という進め方で構いません。
最初の決算を一度やってみると、自分の事業のどこが忙しいかが体で分かります。その実感が出てから考えるほうが、よい判断になります。
出典(解説)ハウスドゥ「会社設立時の決算月の決め方とポイント」2026年9月15日確認
定款そのものの管理

事業年度に限らず、定款を変えたときの扱いを整理しておきます。会社設立のあとに迷いやすいところです。
会社設立のときに作った定款を、原始定款といいます。株式会社なら公証人の認証を受けたものです。
原始定款は、そのまま保管します。書き換えたり捨てたりしないでください。
定款を変更したら、変更後の内容を反映した定款を別に作ります。これを現行定款と呼ぶことがあります。
現行定款には、公証人の認証は要りません。変更のたびに公証役場に行く必要はないということです。
そのかわり、変更を決議した株主総会議事録を保管します。これが変更の根拠になります。
金融機関や官公庁に定款を求められたときは、現行定款を出します。議事録を一緒に求められることもあります。
会社設立の登記のあとに定款を出す場面は、意外とあります。法人口座の開設、許認可の申請、補助金の申請です。
そのたびに、いまの内容が正しく反映されたものを出せる状態にしておいてください。
電子定款で会社設立をした場合も、考え方は同じです。元のファイルを残し、変更後の内容を別に管理します。
定款の変更を何度もすると、どれが最新か分からなくなります。作成日や版を入れておくと迷いません。
登記事項に関わる変更なら、別に登記も必要です。事業年度は登記事項ではないので、そこは要りません。
商号、目的、本店、役員。このあたりを変えたときは、定款変更に加えて変更登記が要ります。登録免許税もかかります。
出典(解説)freee「株式会社の定款変更が必要なケースは?」2026年9月15日確認
まとめ

事業年度の条文は決まった形があり、変えるときも登記は要りません。押さえるところを並べておきます。
- 条文は「当会社の事業年度は、毎年〇月〇日から翌年〇月〇日までとする」の形。暦年と同じなら「翌年」を入れない。
- 2月を決算月にするなら「2月末日」と書く。うるう年で日数が変わるため。
- 設立1期目は書かなくても決まる。附則に書くなら「会社の成立の日から」とする。
- 決算期の変更は定款変更。株式会社は株主総会の特別決議、合同会社は原則として総社員の同意。
- 事業年度は登記事項ではないので、変更しても登記は不要。登録免許税もかからない。
- 税務署・都道府県・市町村への届出は必要。異動届出書に議事録の写しを添える。
- 変更した年は1年未満の事業年度になる。決算と申告がその年だけ余分に発生する。
ここに書いた内容は会社法と法人税の実務にもとづく2026年9月15日時点のものです。届出の様式と期限は自治体によって異なりますし、消費税への影響は事業の中身によって変わります。会社設立の登記や定款のことは法務局の登記手続案内で、税のことは税務署か税理士に確かめてください。
出典(解説)弥生「事業年度とは?」2026年9月15日確認
条文は一行です。通して読むだけで足ります
事業年度の条文でつまずくのは、たいてい単純な書き間違いです。開始日と終了日がつながっているか、「翌年」の有無が合っているか。定款を通して一度読めば見つかります。
決算期をどこに置くかの判断材料については、事業年度の決め方を扱った記事があります。消費税の免税との関係もそちらにまとめました。
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会社設立の登記が終わっても、税務署への届出や社会保険の手続きは残ります。定款の内容によって決算期も変わるので、登記と合わせて相談先を決めておくと迷いません。※弊社調べになります。
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