会社設立の登録免許税は半額になるのか|特定創業支援等事業の軽減措置を条文から確かめる
会社設立の登録免許税が軽くなる制度があるのかを、所管官庁の案内で確かめます。登記の前に、定款の内容と合わせて条件を読んでおくための記事です。
会社設立の費用を調べていて「登録免許税が半額になる制度がある」という話にたどり着いた人に向けた記事です。本当に使えるのか、どれくらい時間がかかるのか、自分の会社設立に間に合うのかを判断できるように書きました。すでに証明書を取っている人は、添付のしかたを扱った後半から読んでください。
会社設立の登録免許税は、株式会社で15万円、合同会社で6万円が最低額です。これが半分になる制度があります。産業競争力強化法にもとづくもので、市区町村が実施する創業支援を受けた人が対象です。ただし条件があり、時間もかかります。使えるかどうかを見極めるところから始めましょう。
半額になるのは、特定創業支援等事業の証明を受けた場合

会社設立の登録免許税が軽くなる制度は、産業競争力強化法にもとづくものです。市区町村が創業支援等事業計画を作って国の認定を受け、その計画にもとづく特定創業支援等事業を実施しています。
その支援を受けた人が、市区町村から証明書をもらいます。証明書を会社設立の登記の申請書に添えると、登録免許税の税率が下がる、という仕組みです。
税率は1,000分の7から1,000分の3.5になります。0.7パーセントが0.35パーセントになる、ということです。最低額も半分になり、株式会社なら7万5,000円、合同会社なら3万円です。
会社設立で資本金を数百万円にする人が多いので、実際には最低額のほうが効いてきます。つまり株式会社なら7万5,000円、合同会社なら3万円がそのまま浮く計算になります。
注意したいのは、これが会社設立の登記だけの話だということです。定款認証の手数料が安くなるわけではありませんし、紙の定款に貼る収入印紙4万円が要らなくなるわけでもありません。軽くなるのは登録免許税だけです。
また、すべての市区町村でこの制度が使えるわけではありません。市区町村が計画を作って国の認定を受けている必要があります。認定を受けている市区町村はかなり多いのですが、自分の住んでいるところが含まれるかは確かめる必要があります。
どこの市区町村の証明書でもいいわけでもありません。原則として、会社設立をする場所——本店を置く市区町村の証明書が要ります。住んでいる市区町村と本店を置く市区町村が違う場合は、そこの窓口に確かめてください。
他にも優遇がある
特定創業支援等事業の証明書は、登録免許税の軽減だけに使うものではありません。日本政策金融公庫の新規開業資金の対象になったり、信用保証協会の創業関連保証の枠が広がったり、補助金の申請要件を満たしたりすることがあります。
会社設立の登記の費用だけで判断せず、資金調達まで見て使うかどうかを決めると、取る価値が変わってきます。
制度の全体像は中小企業庁のページにまとまっています。認定を受けた市区町村の一覧も、そこから辿れるようになっています。
出典(一次情報)中小企業庁「会社設立時の登録免許税の軽減について」2026年9月15日確認
証明書をもらうまでに何をするか

証明書をもらうには、市区町村が実施する特定創業支援等事業を受ける必要があります。内容は市区町村によってかなり違います。
よくあるのが、創業塾や創業セミナーの受講です。経営、財務、人材育成、販路開拓という四つの分野について学ぶ形が一般的で、複数回にわたって開かれます。
個別の相談支援という形もあります。商工会議所や商工会、金融機関の窓口で、継続的に相談を受けるものです。回数や期間の要件が定められていることが多くあります。
共通しているのは、一度きりでは足りないという点です。継続して支援を受けたことが要件になっているので、申し込んでから証明書が出るまでに数か月かかることも珍しくありません。
支援を受け終わったら、市区町村の窓口に証明書の交付を申請します。申請書のほかに、支援を受けたことが分かる書類を求められます。交付までに日数がかかることもあります。

会社設立を急いでいる人には、この制度は向きません。数万円のために数か月待つことになるからです。逆に、まだ事業の準備段階で、開業の時期に幅があるなら、使う価値は十分にあります。
創業塾の内容そのものが役に立つ、という面もあります。会社設立の手続きだけでなく、事業計画の立て方や資金繰りを学べるので、登録免許税の軽減はおまけだと考えている人もいます。
費用がかかる講座もあります。受講料が数千円から数万円のところもあるので、軽減される金額と比べてみてください。無料で実施している市区町村もあります。
出典(一次情報)大阪市「特定創業支援等事業について」2026年9月15日確認
軽減後の金額を計算する

軽減措置を使った場合の登録免許税を計算してみます。式は同じで、税率だけが変わります。
資本金の額に1,000分の3.5を掛けます。その結果が最低額に届かなければ、最低額を納めます。株式会社の最低額は7万5,000円、合同会社は3万円です。
資本金100万円の株式会社なら、100万円 × 0.0035 = 3,500円。最低額の7万5,000円に届かないので、納めるのは7万5,000円です。軽減がなければ15万円だったので、7万5,000円が浮きます。
合同会社なら3万円です。軽減がなければ6万円なので、3万円が浮きます。

浮く金額は、株式会社で7万5,000円、合同会社で3万円。会社設立の実費の中では大きな金額です。ただし、数か月の時間と、講座の受講料がかかることもあります。
電子定款にすれば4万円が浮きます。こちらは数日で準備できるので、時間対効果でいえば電子定款のほうが効率がいい面もあります。両方を組み合わせるのがいちばん安く済みます。
会社設立の費用を最大限に抑えたいなら、合同会社を電子定款で作って軽減措置を使う、という組み合わせになります。実費は登録免許税3万円と証明書の手数料くらいまで下がります。
ただし、そこまで費用を切り詰めることが目的になってしまうと、本末転倒になりかねません。会社設立は事業を始めるための手続きなので、開業の時期と天秤にかけて決めてください。
出典(一次情報)国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」2026年9月15日確認
軽減がない場合の税率は1,000分の7、最低額は株式会社15万円・合同会社6万円。
自分の市区町村で使えるかを調べる

この制度が使えるかどうかは、会社設立の本店を置く市区町村が国の認定を受けているかで決まります。調べ方は二つあります。
一つめは、中小企業庁のページから辿る方法です。会社設立時の登録免許税の軽減についての案内があり、認定を受けた市区町村の一覧に行けるようになっています。
二つめは、市区町村のサイトで直接探す方法です。「特定創業支援等事業」「創業支援等事業計画」といった言葉で検索すると、案内のページが見つかります。制度を実施している市区町村は、たいてい専用のページを用意しています。
ページには、どんな支援を実施しているか、証明書をもらうための要件、申請の方法が書かれています。実施している機関——商工会議所や金融機関——の名前も載っていることが多くあります。
見つからない場合は、市区町村の産業振興の担当課に電話してみてください。制度がない場合もありますが、近隣の市区町村を紹介してもらえることもあります。
会社設立の本店をどこに置くかがまだ決まっていないなら、この制度があるかどうかを判断材料の一つにすることもできます。ただし、本店の場所は事業のやりやすさで決めるほうが本筋です。
証明書をもらうまでの期間も、窓口で確かめておいてください。次の創業塾がいつ始まるか、個別相談なら何回必要か。会社設立の日取りを決めるうえで、いちばん知りたい情報です。
受講の費用も聞いておきます。無料のところもあれば、数万円かかるところもあります。浮く金額と比べて、それでも受ける価値があるかを判断してください。
すでに事業を始めている個人事業主でも、要件を満たせば対象になることがあります。法人成りで会社設立をするつもりなら、窓口で自分の状況を伝えて確かめてみてください。
出典(一次情報)川崎市「特定創業支援等事業について」2026年9月15日確認
証明書を登記に添えるときの手順

証明書をもらったら、会社設立の登記の申請書に添えます。ここでの手順を押さえておきます。
まず、申請書の登録免許税の欄に、軽減後の金額を書きます。軽減の根拠となる法令の条項も書きます。書き方は法務局や市区町村の案内に例が載っていることが多いので、それに合わせてください。
次に、添付書類の欄に証明書の名前と通数を書きます。「産業競争力強化法に基づく認定を受けた〇〇市の特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書 1通」といった書き方になります。
証明書そのものは、他の添付書類と一緒に綴じます。原本を添えることになるので、手元に残したい場合はコピーを取っておいてください。
収入印紙は、軽減後の金額で買います。うっかり軽減前の金額で買ってしまうと、余った分の扱いが面倒になります。会社設立の登記に行く前に、税額を確定させておいてください。
証明書には有効期間が定められていることがあります。交付を受けてから一定の期間内に会社設立の登記を申請する必要がある、という形です。取ったら早めに登記まで進めてください。
自分の会社設立がこの軽減の対象になるかどうかで迷ったら、申請先の法務局に確かめるのが確実です。証明書を出した市区町村に聞いても、登記の手続きまでは分からないことがあります。
法務局の登記手続案内は予約制で無料です。証明書と申請書を持って行って、この書き方で足りるかを見てもらうこともできます。
軽減措置を使っても、定款の作り方や添付書類の顔ぶれは変わりません。証明書が1通増えるだけです。会社設立の登記の他の部分は、通常どおり進めてください。
出典(解説)スペチアーレ司法書士事務所「産業競争力強化法に基づく特定創業支援事業への支援」2026年9月15日確認
使えない場合、使わない場合

軽減措置は金額としては大きいのですが、誰にでも勧められるものではありません。使わない判断が正しい場面もあります。
まず、会社設立の日取りが決まっている人には向きません。取引先との契約の都合、許認可の申請の都合、決算期の都合。会社を作る日が動かせないなら、数か月待つ選択はできません。
次に、市区町村に制度がない場合です。認定を受けていない市区町村もあります。近隣の市区町村で受けられることもありますが、本店を置く市区町村の証明書が要るのが原則なので、そこは確かめてください。
受講料が高い場合も考えどころです。講座の費用が数万円かかるなら、浮く金額との差が縮まります。合同会社なら浮くのは3万円なので、受講料次第では見合わなくなります。
時間の価値も考えてください。創業塾に通う時間を、事業の準備に使ったほうが結果として得になる、という判断はありえます。
逆に、使う価値が高いのは、開業の時期に幅があって、資金調達も考えている人です。証明書は日本政策金融公庫の融資や信用保証協会の保証でも効いてくることがあるので、登録免許税の軽減だけで判断しないほうがいいところです。
創業について学びたいという気持ちがあるなら、そちらが主目的になっても構いません。会社設立の手続きだけでなく、事業計画や資金繰りを整理する機会として使っている人もいます。
迷ったら、まず市区町村の窓口に電話してみてください。次の講座がいつ始まるか、何回で証明書が出るかが分かれば、自分の会社設立の予定と重ねて判断できます。
使わないと決めたなら、電子定款で4万円を浮かせるほうに力を向けてください。数日で準備できて、確実に効きます。
出典(解説)司法書士九九法務事務所「認定特定創業支援等事業って何?」2026年9月15日確認
よくある思い違い

この制度について、よく誤解されているところを並べておきます。会社設立の費用を見積もるときに効いてきます。

いちばん多いのが、定款認証も安くなると思っているケースです。公証役場に払う手数料は公証人手数料令で決まっていて、この制度とは関係ありません。株式会社の会社設立なら3万円から5万円がそのままかかります。
あとから還付を受けられると思っているケースもあります。会社設立の登記を先に出してしまうと、あとで証明書を取っても軽減は受けられません。順番としては、証明書が先です。
証明書があれば必ず適用されるわけでもありません。申請書に必要な記載をして、証明書を添えてはじめて適用されます。書き方に自信がなければ、法務局に確かめてください。
また、この制度は会社設立の登記だけが対象です。設立後の役員変更や本店移転の登記には使えません。一度きりの制度だと思ってください。
金額は間違いのないように計算してください。軽減後の税率は1,000分の3.5、最低額は株式会社7万5,000円、合同会社3万円です。国税庁と中小企業庁のページで確かめられます。
出典(解説)補助金ポータル「特定創業支援等事業とは?証明書で受けられる4つの優遇措置」2026年9月15日確認
まとめ

会社設立の登録免許税は、特定創業支援等事業の証明書があれば半額になります。株式会社なら15万円が7万5,000円に、合同会社なら6万円が3万円になります。
- 根拠は産業競争力強化法。市区町村が実施する特定創業支援等事業の支援を受けた人が対象。
- 税率が1,000分の7から1,000分の3.5になり、最低額も半分になる。
- 証明書をもらうまでに数か月かかることがある。会社設立を急ぐ人には向かない。
- 軽くなるのは登録免許税だけ。定款認証の手数料も紙の定款の印紙も変わらない。
- 証明書は会社設立の登記の申請書に添える。あとから還付は受けられない。
- 原則として、本店を置く市区町村の証明書が要る。制度がない市区町村もある。
- 融資や保証でも効いてくることがあるので、登記の費用だけで判断しないほうがよい。
ここに挙げた税率と金額は2026年9月15日時点で、国税庁と中小企業庁の案内にあたって確かめたものです。市区町村ごとの運用は違いますし、制度そのものも見直されることがあります。会社設立の前に、本店を置く市区町村の窓口と、中小企業庁のページを確かめてください。登記の書き方で迷うところは、法務局の登記手続案内が無料で使えます。
出典(解説)アントレサロン「会社設立時の登録免許税を半額するには?」2026年9月15日確認
まず、市区町村の窓口に電話してみてください
この制度が使えるかどうかは、住んでいる市区町村次第です。調べるのは電話一本で済みます。次の講座がいつ始まるか、何回で証明書が出るか。それが分かれば、自分の会社設立の予定と重ねて判断できます。
使わないと決めたなら、電子定款で4万円を浮かせるほうに力を向けてください。数日で準備できます。登録免許税の計算そのものを確かめたいなら、計算方法を扱った記事に戻ってください。
登記のあとに待っている、税務・社会保険まで任せられる所
会社設立の登記が終わっても、税務署への届出や社会保険の手続きは残ります。定款の内容によって決算期も変わるので、登記と合わせて相談先を決めておくと迷いません。※弊社調べになります。
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